GTO ゴトー
急に暑くなった体育館。なぜか一瞬静まり、そしてまたざわつき始めた。
コート後方に上がったシャトルめがけ祈るようにジャンプし、渾身のスマッシュを打った。相手は一瞬たじろいぎ、遅れたもののラケットにうまく当てて返してくる。「ダメだっ!間に合わない」と思いながらもネット際に猛然とダッシュし、最後は滑り込むようにつんのめった。しかし、無情にもシャトルは目の前の床に落ちた。「ゲーム!」GTOゴトーの高校生活最後のシングルスに幕が下りた。悔しくて、悔しくて、涙が止まらなかった。
「なんで自分だけ・・・、それもよりによって後輩に負けるなんて・・・」
「おい、ゲンキ!しっかりしろよ!!」
自問自答しながら、そして目をはらしながらも審判をしなければならない「負け審」制度は、傷口に塩を塗るような辛さだ。
GTOゴトーは名が「ゲンキ」である。イニシャルはGG。見た目も中身も健康そのもの。悩みなんて無いんじゃないか、と思わせるような風貌が周囲を和ませる。もちろん本人は皆の考えているより何倍も悩みを抱え、苦悩の日々を歩んでいるのかもしれないが。
試合終了後、当方はGTOゴトー選手本人に軽くインタビューを試みた。
「どうだった?」
「アッ、いあやー、あのー(おそらくクセだろうが、たいていいつもこのセリフで始まる)、固くなっちゃって・・・」
相当なプレッシャーだったようだが、会話から察するに頭の中の風景は完全な『劇画調』である。斜め上から雷神、風神の様な勢いで攻める、弁慶の様に守る、ダメだ、これじゃ古すぎて意味が分からない。きっと彼の中のキャラクターは今風のいわゆる「イケメンアスリート」なのだろう。
「人生って、裏目、裏目に出るんだよな・・・」これが私からの精一杯の慰めだった。だが、本当なんだ、思い通りにならない人生を生きる、それも心の炎を激しく燃やし続けて生きる、これしかないんだ。
ゆくゆくは小学校の先生になりたいという。お似合いだ。きっと顔やしぐさを子どもにまねされることだろう。もちろんあだ名も付けられる、「GTOが来たぞ!」ならまだ良いほうだ。
GGはもちろん「ガッツ、ゴトー!」だ。
Play your part for others.(ひとのために心の炎を燃やせ!)
ちなみに彼はスドーとダブルスを組んでインターハイ予選(県大会)に挑む。