冬の星空

 胸が痛い、とはこのことだ。

 午後届いた知らせでは大丈夫だったが、夕刻スマホの画面に映ったニュースでは命を落としたという。

 アフガニスタンで人道支援に尽くした中村哲先生が凶弾に倒れた。

 幼い娘に「こんな人がいるんだよ」と伝えた先生の人生を勝手に後追いしながら、遠くから見つめてきた。

 こんなに寒い日はどうしただろうか、こんなに暑いときは先生はどうしたのだろうか?と一度も会ったことがないのに勝手に重ね合わせてきた気がする。突然現れるこの壁を越えるには、「哲っつぁん(勝手に心の中でそう呼ばせてもらっていた)はどうやってこの問題を解決したのか?」と考えを巡らした。

 何より「人に教えられた学び」ではない「必要に迫られ、そして求めた学び」を続け、それを無償の愛と共に人々に「伝え」続けたお姿をわたしは慕っていた。誰だって生きる目印は欲しいものだろうが、わたしにとっては中村先生が大きな灯台だった。

 胸が痛い、もう一つの理由は、我々が米つくりなどでお世話になっていた方が先週急逝したことだ。

 卒業生のお父様だから、かれこれ20年以上のお付き合いだ。いつもニコニコ優しく、かといって我々の子育て活動には広く、奥底から支えてくださった方だった。決して出しゃばらない、今風の言葉なら「上から目線」ではない方だった。だけどそれでも野暮じゃない。若者の心をよく知っているその方は、遠回しに「自然っていいよ」といつもゆるく誘ってくれた。

 奇しくもお二人とも「大地に水を注ぐ人」だった。そんなことで、このような私でも、例えば、水のこととか、種のこととか、天気のこととか、そして何より「Happy」については考えたし学んだ。そして「伝えたい」と心から思った。

 ありがたいことだ。

 今晩は澄み切った空だ。外に出れば、右上からスパッと切られた月が片眼でこちらを見下ろしている。東の空には冬の星座が瞬いている。

 星になったお二人に、合掌。

 ありがとうございました。

精米所でのひとコマ