こども
朝、家を出るときの東の空が明るみを帯びてきれいな色に包まれる。
おさまるどころかこれからが本格的な様相を呈している「コロナウイルス」の感染拡大。そのあおりで、楽しみにしていた週末の「西武台千葉バドミントンHomecoming Day:『OB,OG全員集合!』」が延期となった。いろいろな顔に会えるのを心待ちにしていたし、たまには一日バドミントンで遊んでもいいかな、と思っていたので残念でしょうがない。
西武台を巣立った(元)選手も300名近くになったかもしれないが、ほとんどが家庭を持ち、こどもを大切に育てている世代だ。「昔はお父さんもモモタ選手みたいだったんだぞ!」とか「信じないかもしれないけど、ママは抜群のスタイル、というかガリガリだったんだよ」なんて話している方もいるだろう。こどもと話せるなんて幸せそのものだと思う。
こどもの数は年々減って、かつてはこどもを支える大人が2~4人だったものが、今では7~8人の大人が1人のこどもを支える計算になっている。それなのに、こどもの7人に1人は「貧困」だとか、「こどもの自殺率が高止まりしている!」なんて話題をあちこちで耳にする。サクラもいいけど、こどもたちもよく見て!って言いたい。
湯浅誠さんが、切り捨てられた派遣社員のために日比谷公園に「派遣村」を作ったのは10年以上前のことだ。彼自身の見た目やしゃべり方から「ああ、どうしたんだ?」くらいに感じた人は多かったと思うが、この人はスゴイ。常に社会を自分の一部として感じ、考え、力を尽くしてきている。その後、彼はいわゆる「こども食堂」を中心となって運営する。そして全国のこども食堂のネットワークを構築して、今までと変わらずこどもを中心とした『弱い人たち』にあたたかなあかりを灯し続けている。
私たちが運営している「特定非営利活動法人NPOアルファバドミントンネットワーク」は、毎週水曜日に関宿体育館で『アルファクラブ』と称して「こども食堂」のバドミントン版を運営している。一見するといわゆる「ジュニアクラブ」的に見えるが中身は全く異なる。放課後のひととき、学校や学年も異なるこどもたちがラケットをかついでやって来る。簡単に言えば「アソビ場」だ。毎週、楽しいひとときに向かってこどもたちが笑顔をほころばせ体育館に走って入ってくる姿を見るにつけ微笑ましくなる。
俗に言う「ジュニアクラブ」も経験している私たちは今、この水曜日のクラブの難しさを肌で感じている。「そんなんじゃ勝てないよ、それでいいの?」と言えばある程度はコントロールできるジュニアクラブ、言い換えれば「勝ち負けを前提としているクラブ」とは比べものにならないほど難しい。だって、別に強くなくたっていいんだ。勝たなくたって良いんだ。そりゃ、かっこよく勝ちたいけど・・・。それより今楽しい、何か新しい世界に足を踏み入れている感じがする。何より早く羽を打ちたいんだ!というこどもたちに、その日、よかった、楽しかった、というお土産を背負せて体育館の外で待つママ、パパ、おばあちゃんと、夕日を背景に手を繋いで家路に向かってもらう。これは難しい。幸い我々には一流のコーチがいるからできる。私は隣のコートで高校生の希望者特別練習をしている。こちらは同じバドミントンでも少し、あるいは大きく異なる。必死に羽を追い続ける高校生選手の目線の先を、こどもたちは口を開けて追い続ける。だけどこどもたちは素直に尊敬なんかしない。目茶苦茶なあだ名や暴言で罵りながらその反応を手ぐすね引いて待っている。こどもが大人になる演習だ。
こどもだから何でも許すわけにもいかない。だが、こんなに受け入れてくれる瞬間を共有する幸せも感じてもらいたい。そしてその感動やよろこびを経験したこどもが大人になれば必ず同じ思いを「伝える」はずだ。
「こども食堂」はほんの入口。何でも良いんだ。そのサッカー版、野球版、合唱版・・・。自分が生きるだけで精一杯だ、と思っている「おとな」のみなさんは多いかもしれない。だけどそれでも、一粒でも良い、一瞬でもいい、つき合ってほしい。ご自分の人生もグ~んと楽しくなりますよ。
関宿の体育館を出ると、夕日が残したきれいな色の空が広がっていた。
朝と同じだ。
※ただいま「アルファクラブ」は定員いっぱいです。We are sorry.