イマイマ
この頃、つまり本格的な冬の前に、あたたかくおだやかな日が訪れる。それはまるで春のようだから「小春」という。NPO主催のアルファサイクリングの日がまさにそんな日だった。小春日和の日差し、色づく木々の間を縫うように野田市の南半分35kmを一気に走った。昨年は北の三角形、そして今年が南の台形、三角形の野田市を高校生活の間に必ず一周回れるように考え出した。自分の通っていた学校がある街、それほど見応えのある観光地ではないが自分の目で、そして足で知って欲しいと願ってのことだ。
「イマイマ」とは新チームのトップダブルスのこと。昔からオグシオだとかタカマツだとかシダマツのように、ダブルスのペアの愛称として使われるフレーズだ。こちらのふたり、イマはイマムラシューカ、そしてもう一人のイマはイマイミカ、だからイマイマ。二人は驚くほどコミュニケーション能力が高い、というか相手が誰でも平気で話ができる。私の相方(公私共々)も誰とでも話を平気でし始める。話し相手はだれ?と尋ねると「知らない」と返ってくる。相方曰く「そうやって女の人が世の中回しているんだよ」だそうだ。
イマイマの話にもどす。その二人は中学時代から組んでいるのでまあまあ上手だが、大人のダブルスにシフトを変えられなくて(詳細はココでどうぞ)苦労していた。だから新チームに変わった途端、無様な試合を繰り返し、彼女らは「イマイマはイマ一歩、イマイチ、イマヒトツ・・・」と揶揄されていた。今般のサイクリングでもシューカ選手は、見事(?)インフルエンザにかかり、高熱にうなされ欠場、他方ミカ選手は、出だし早々、橋の下のアップダウンで、調子をこいてすってんコロリ!らしいな・・・とつくづく思った。ついでに言うと、シューカ選手は自分の心のモデルを、前髪が鋭く、顔の3分の1程度を斜めに隠している「劇画調マンガ(あるいはアニメ)のヒーロー」を、そしてミカ選手は目が5~6倍くらい大きな「少女マンガのヒロイン」風の自分を常に描いている、のではないかと勝手に察している。
イマムラシューカ選手は今夏からキャプテンになり、長き坂を登る旅路に大きく重い荷まで背負ってしまった。今日はイマイ選手が相方に変わってキャプテン代行、つくづくパートナーの大変さを肌身で感じていた。
しかし、このお話上手な二人は、なんだかんだあるにせよ、力を上手に合わせるコツを得ているようだ。県大会の決勝戦のこと。あと一歩で敗れそうな時でも二人は決して下を向かなかった。「互いの顔や目を見て、あっ、このパートナーならば大丈夫だと感じたときが一番強い!」このセリフをその瞬間画(え)にして見せてくれた。見事な逆転劇で優勝、ついでにシングルスでも新記録をたたき出した。「恭敬できる選手との出会い」が指導者としての我々の原点だと思っている。
「優勝したい」「大きな大会に出たい」「勝ちたい」というのは【願望】である。一方【希望】とはそんなちっぽけな話ではない。「ああ、もうダメだ・・・」と底の見えない挫折と絶望の淵に立たされたときに、その谷間を厚く覆う言葉にならないくらいのどんよりとした雲の、ほんのわずかなスキから、見たことのないような強く鋭く細い一筋の光が差し込む。それが【希望】だ。そのくらい尊くまれな光が次の進むべき道を教えてくれる。
イマイマはまだまだだ。だがイマイマは確実に「イマ一歩踏み出した」。そして彼女らの【希望】が私たちの【夢】になっていく。

常に写真は真ん中、シューカ選手

サイクリング お昼のお弁当、みんなで作りました!
