4月 折々のことば

2015年のバドミントンマガジンに載せた『折々のことば』から再掲です。

 

バドミントンとの出会い -新入部員を迎える-

 誘われる、誘われない、いずれにしても最初に体育館に足を踏み入れるのは自分自身です。

「パーンッ!」「キュッ!」、ドアを開けてのぞいたその瞬間、聞こえる羽を打つ音、シューズが床を鳴らす音、声を出し合う選手たち、肩を動かし激しく息を吐き、顔や額から噴き出す汗。

どんな人でも「初めての異なる世界」に接触するときは、期待と共に緊張感や不安感がよぎるものです。時には「こわい」と思う人もいるかもしれません。特に「出会い隊」や「乗り換え隊」の選手にはこの瞬間が衝撃的です。

だから、顧問の先生やマネージャー、ちょっと気の利く選手が新入部員に笑顔で近づくのでしょう。そして「長く続けてほしい」と願いながら様々な話をしてくれるのだと思います。当の本人は左右や上下、緩急のあるシャトルコックを目で追いながら上の空で、だけどドキドキしながら話を聞くことになるのでしょう。

何でもはじめの印象は強く残ります。だからこのときのやりとりは大切にしたいと思います。前述の「長く続けてほしい」という願いの中には「習得するまでは多くの時間が必要になる」ということを前提としているのだと思います。人それぞれ時間は異なりますが、羽を打てるようになって、動けて試合ができるまではやはり「じっとがまん」の時間が求められるのです。

そして新入部員は「ぼくにも、私にも、こんなふうにできるようになるのかな?」と素朴な不安を持つはずです。「質と量」を間違えなければ誰でも試合ができるレベルまでは到達するはずだ、と私は常々思っていますから、「大丈夫です」と応えます。これは随分無責任な話かもしれませんね。だけれども大切なことは「希望」です。先ほどの言葉に付け加えるならば「よく考えられた『質』の練習を適切な『量』で繰り返し、そして何よりも本人の強い『動機付け』」があれば何とかなる、と私は楽観的に考えているからです。

バドミントンのルールは年齢も男女の性別も問わず同じです。これは「いくら弱い者でも大きくて強い者と試合ができる」ことを言っているようなものです。初めて見た強烈な「スマッシュ」はとても印象深いものです。しかし、シャトルの構造やそこから生み出されるフライトの状態を観れば、『一撃必殺』のショットはほとんどないことはがわかります。そこで、バドミントンのラリーは〈いくらでも長く続く〉のです。そしてそのために「強く、長続きする体力」と「持続性のある集中力、精神的なタフネス」が求められます。だからこそ「体力づくり」「走り込み」もしなければならない、とはっきり言うことも忘れてはならないと思います。同様に、ルールのついても話が及ぶと思いますが、その中でもバドミントンのマッチは「握手で始まり、握手で終わる」そんな「マナー」も最初に話すべきではないでしょうか。

その他に新入部員の皆さんは「用具」について、またはかかる費用について関心を持つと思います。これらは個人や学校、チームによって一概には言えませんが、用具については近くのお店の方やメーカーの方々に直接アドバイスをもらうことを勧めた方が良いと思います。

部活動に加わるとは、「縁」と「出会い」の産物でもありますし、また、「コミュニケーション能力」が問われる瞬間とでも言って良いかもしれません。そこで大切なのはまずは自分から「聞くこと」「尋ねること」だと思います。私などはすべて先回り説明し、新入部員のこの聞いたり、質問したりするチャンスの「芽」を摘むような失敗を繰り返しています。ですから心に余裕を持ってこれらにも注意したいものです。

春、バドミントンとのいい出会いを期待しています。