コツコツ、モクモク、バリバリ!

 青い空と白い雲、そしてギラギラした太陽がそろった。体育館はクラクラするくらい暑いが、中高生選手たちはそれぞれ大会シーズンに入り、さらに熱くなってシャトルを追い続けている。

 遠い街に住む娘から「いいよ」と勧められた映画を観た。昭和から平成へ時代の移り変わりとともに生きる人を丁寧に描いた秀作だった。夫婦そろって観たのだが、言葉に出さないまでも、互いに「どこを娘は良いと思ったのだろうか」という同じ命題を頭の隅に置きながら鑑賞にふけった。そうかこの・・・場面だな、と考えながら。

 さらに遠いインド洋の小さな島国の双子の女子選手、Nabeeha と Nabaahaが活躍している。来日し、西武台で一緒に練習したのが2年以上前だが、その後の活躍を小さな楽しみにしていた。先日のIndian Ocean Island Games 2019でダブルスが準優勝、Nabeehaがシングルスで優勝の快挙を成し遂げた。自分のことのようにうれしい。

 日本ではYONEX JAPAN OPEN 2019 が開催されている。1年を切った東京オリンピックのまさに前哨戦。活躍する日本選手に熱い視線が向けられている。一方で同じ山の頂点を逆サイドから目指して挑んでいる外国人選手の活躍にも注目が集まっている。生活習慣も文化も大きく異なる人々が「バドミントン」という山をどのように登るか、興味は尽きない。

 いまの世は「労せずに功を得よう」と考えるのが「当たり前」である。「それだったらこのアプリが」「そんなことしなくてもこのデバイスが」そして「ああダメ、ムリムリ、そんなの意味ない!」と損得勘定優先主義で、人々はスーパーマン化し、そして仮想の宙を舞う。一方で残念ながら「方向違いの頑張りから無用な挫折感に苛まれる若者も多い」(斎藤兆史「努力論」)とも言われている。

 実際のひとの生きるステージはさほどスマートではない。むしろ叩けば埃が舞い上がり、穴ぼこだらけの崖っぷちで、いつ転落してもおかしくないくらいの複雑な地形をしている。行き詰まり、自らを不幸と感じながらもその中をほんの僅かずつ、しかも仲間と手を取り合って、笑いながら励まし合いながら生きていく。

 バドミントンはとても地味な作業の積み重ねであると思っている。だからそれこそ今では死語と言っていいくらいの「努力」だとか「勤勉」だとかの美徳を追い求めなければならない。本来このような志は我々日本人には大切な価値観として受け継がれてきた。この競技での昨今の好成績もこの背景があったからなのだろう。

 バドミントンとは限らず、あらゆる分野で「気の遠くなるような作業」をやりこなした偉人は数えしれない。その一人でもいいからまず調べた方がいい。それぞれの苦悩や葛藤の中から、高い志や打ち込んだ日々、成し遂げた業績を、それこそ丁寧に学ぶべきだ。偉人たちは決して「宙」などは舞っていないはずだ。むしろ地面を這いつくばって、しがみついて、そして多くの仲間たちに支えられながら生きている。そのような「人間」としての尊い価値観が伝わることだろう。夏休みの自由研究にはもってこいだ。

 中学生は県大会を今日で終え、関東大会、全国大会を目指す。そして高校生は明日から熊本に向かう。誰もがそしてすべての選手がさらに高い頂を目指している。そこまで登れば次の頂が見えるはずだ。だから新記録を目指せ!もちろん笑顔で。

Nabeeha と Nabaahaを囲んで