サイコー学年

インターハイ予選が終わった。

梅雨空と晴れ間をくぐり抜けるように3日間、三部作の劇に幕が下りた。

西武台千葉高校は千葉県下でも最も歴史が浅い高校のひとつである。だが浅いと言っても開校からもう30年以上経っているのでそれなりの重さも感じる。

今期の主役たちは第30期生の選手たちだ。当たり前だが1期生からキャラクターが異なり特色もそれそれのチームが活躍してきたわけだが、第30期生を一言で言うならば、それも最も辛口でしかもご両親、とりわけお母さん方には申し訳ないが、あえて「マザコン野郎と不器用長女の集まり」と言いたい。
ピンチになればすぐ凹み、逃げ出したり黙ったりして、こちらから歩み寄らなければ立ち向かわない男たち。何度言っても、何度やらせてもできない、覚えられない、腕は上がらないがこちらの血圧は上がり放題の女たち。だから今期の予選には「期待しない」ことにした。
男子は学校対抗戦で、あと僅かという最後の壁のアタックに敗れ、個人戦との中日である「千葉県民の日」などは『ゲゲゲの鬼太郎 呪いの部活動』のような暗い暗い練習を行っていた(しかもSDO最終盤捻挫付き)。一方の女子は「下克上」と言えば格好いいが、余りにも不器用な長女に、次女や三女がしびれを切らせて「おねえちゃん、なにやってんの!」と私の目の前で『逆喝』を食らっていた。
当日は「期待しない」から「魔の予想は的中する」と逆さまに自信を持っていた。

当方は女子会場で一部始終をこの目で見ていた。男子の様子はどなたか、奇特な方が「不幸な知らせ」をキャッチすることだろうと踏んでいた。大会はベスト8まで危なげなく、でなく危なげある勝ち方で出そろった。まずはシングルス専門のキャプテン山田と直前に捻挫してしまいその上足首のサポーターがゆるゆるの古橋の両選手が、知らないはずのダブルスで大激戦を演じた。最後はやはり、やり方を知らないふたりが思い思いのミスをしてくれて、敗れはしたものの我々の目を覚まさせてくれた。続く準決勝では次女が予定不調和で台本なしの「ぶっちぎり」なら良いが「ぶっちぎれ」で敗れる。もう一方の準決勝は西武台同士で、長女対三女のガチ対決。遠目で見ていても長女がやられている。黒いタイツの小悪魔がたちが、「読売ジャイアンツだって連敗記録!」というプラカードを持って、私の頭の中を行ったり来たりしている。

しかしYOD淀チ選手は違った。不器用で不格好なフォームから自信を持ったショットをめげずに打ち尽くす。NAGI佐藤選手も要所要所で「ミスしない」。
このふたりの特徴は、①YOD淀選手はインの見逃しとサイドアウトを得意にしている。②NAGI佐藤選手はアウトと分かっていても打ってしまい、ちょうど良いところではネットにしっかりかける技を持っている。マイナスの女王たちである。
①+②=勝てない、という式の通り、最近は辛い思いばかりしてきたが、その日は違った。ファイナルゲームの長い試合を勝ち上がり、決勝戦でも貫禄の勝利を見せたのだ、優勝だ。プラスの女王になった。

よかったなぁ、と胸をなで下ろしていると、古橋会長がいつもの笑顔で「U字(ユージ中村&TORI相澤ペア)たち、勝ったらしいですよ!!」と教えてくれた。うれしかった。

不器用長女はただの不器用ではなく、マザコン男たちもただのマザコンではなかったのだ。不器用を不憫に思う親だって、マザコンだって、どちらも子を思う親の「当たり前の愛情」がある証拠だ。それがなければもちろん子は育たない。

翌日のシングルスの試合ではチームメイトの援護射撃を受けながら相澤選手が貫禄の優勝を成し遂げ2冠を達成した。女子もダブルスで苦渋を飲んだ、三女、次女がおねえちゃんたちを三決にまわし栄冠を勝ち取った。

今年も3年生の魂がこもった名演技にやられた。それぞれの親子、各家庭の中で繰り広げられてきたここ数ヶ月の「舞台稽古」のおかげで、この晴れ舞台を見事に演じきることができた。それも男女チーム全員が、それぞれの役(割)を熱演しながら、大会という大舞台に幕を下ろすことができた。

何より、記念すべき第30期生男女10名の健闘をここに讃える。
また、これより大学受験に向けてラケットをペンに握り替える選手には更なる研鑽を願う。

あ、あせらない。
き、期待しない。
ら、楽しない。
め、めげない。
な、仲良く力を合わせて、
い、いつも元気にたくましく!

相澤選手、お疲れ様「目つぶり王子」

年頃の女の子たち

梅雨空のスカイツリーと夕日なのだ