頌春前

 明けましておめでとうございます。旧年中は様々な活動やあれこれ四方山話まで書き留めましたが、今年はさらに豊富な話題をご提供できるように努めてまいります。お楽しみください。

 部分日食が観察できた。昨日神奈川県の中学校の先生から観察セットを頂戴して上手い具合に写真も撮れた。何年か前には金環日食で、その際は『専用めがね』よろしく、タイミングがいい商売も目にした。なにしろこのネット社会では情報が先回りして興ざめになりそうになる。 今回は落ち着いた感じでいい。そもそも天体に興味がないわけではないので、多少なりともそわそわしていたが、何よりリアルタイムで観ることができてよかった。

 新年早々、チームの上位3名が鳥取県で行われている全国高体連合宿に参加している。急な風邪引きと故障者を除いた、残る数名のメンバーでの迎春練習となった。年末の関東大会も、これからの大会もその上位3名だけが『西武台の選手』ではなく、チームの全員が活躍してほしいと、心の中ではわかっていても、ついつい残された選手たちの不安をあおるような話や、皮肉めいたアドバイスが続いてしまう。仕方ないといえばそれまでだが、当の選手たちは「明けましておめでとう」の気分が強い北風に一気に飛ばされ青ざめていく。しかし、それでも時は誰をも待たずに過ぎ去っていく。

 みんなで同じ高さの山の頂を目指そうとチームは前進し始める。我々が目指す山にはロープウェイもケーブルカーもない。ただひたすら自分の足で登るしかない。登頂までのスケジュールは決まっていて、全員がそろってご来光を拝めるようにそれぞれの難所を切り抜けてくる。 「頂上から観る景色はこんなだ」「より高くまで行けば見えたりわかったりすることが変わり世界が広がる」と聞かされただけで、自ら山道を上手に選んでスイスイのぼっていく選手もいる。だがその一方で、道を間違えなかなか進まない、そればかりか滑って転んで心身ともにどん底に落ちていく選手もいる。上から声をけかけていてるだけでは到底這い上がってくることができない選手の足下まで下りて、後ろから押したり、それこそ「ケツに火をつける」ことだってある。

 年末年始とOBやOGが大勢来校した。ちょっと前やずいぶん昔にその山を登った経験者から話を聞く。「それほど高い山ではない。むしろ卒業後に対峙する山々は比べもののないくらい高く険しい」と語るものや「簡単に登れると思うなよ。甘く見たらケガするぞ」と忠告する先輩もいる。いずれにしてもその「経験」がものを言わせている。

 今日から数日が1年の中で最も日の出が遅い。つまりなかなか明るくならない。「夜明け前」とは一日のうちで最も暗い時を指す。華やかな舞台で活躍する選手も含め、苦悩する選手たちにとっては今が夜明け前であろうか。いや、今は根を張る季節、「春を迎える前」なのだろう。

 今年も自らも含め与えられた山道を一歩一歩コツコツ登っていこう。「 六根清浄」心清らかに。

元旦の信州上田