7月 折々のことば

2015年のバドミントンマガジンに載せた『折々のことば』から再掲です。

 

 暑くて熱い夏 -部活の夏-

 

 夏休み前の定期考査が終わるか終わらない頃、たいてい梅雨が開ける。試験が終わりホッとした開放感に、いきなり真夏のビーム光線が襲ってくる。試験結果と共に「夏休みの宿題」や「課題」が出されるが、7月中に終わらせる『前陣速攻型』選手がいる一方で、成績不振で職員室に呼び出され「帰らぬ人」になってしまい、「○○、部活辞めるって・・・」なんて話がわき起こるのもこの頃である。

 バドミントン部は夏休みモードに入ろうとしている。体育館は直射日光がないからいいね、などとのんきに言ってくるテニス部の友人に、夏の体育館はどれほど過酷なものか説明するのも暑苦しい。入学の頃に揃えたラケットやシューズにややへたりが見え始める頃であり、先輩方の夏への「お色直し」を見て自分たちも新しいモノが欲しくなる。タイムリーに親のボーナス。上手にねだる頃でもあろう。

 何しろ暑い。それがいやで体育館に入りたくなくなる選手もいるが、なぜかこれがワースト1ということではないようだ。夏休みのバドミントン部のワースト1はズバリ「練習時間の長さ」である。平日は限られた時間をこなすわけだが、夏休みは他の部活とどういうわけか体育館使用スケジュールが上手に調整され、練習時間がグンと延びる。また、メニューにしても通常の本数より多くなったり、複雑になったりして心身ともにバテてくる。

 こんなつらい夏休みを克服する工夫のひとつが「暑さ対策」である。自分好みのとっておきのドリンクを用意し、食欲低下防止のためにお弁当の工夫なども「自己報酬」のひとつとして考えたいものだ。恥ずかしい話だが、私の部員が誤って冷蔵庫にあった「冷えた梅酒」を氷と共に水筒に入れて持ってきてしまった事件があった。幸い、おじいちゃんが慌てて回収に来て、水際で事なきを得た。疲労して、朝眠くて・・・、そんな時は要注意だ。

 二つ目は『夏合宿』である。高校生ならだいたい経験するこの合宿。先輩諸氏から事前にすり込まれる「合宿情報」はたいていネガティブなものだ。「朝なんて○○kmも走らされるんだぜ」とか「○○先輩(たいていOB)が来たら最悪だね」など、時には「あそこは出るんだよ」なんて得体の知らない情報がまことしやかに伝えられる。

 なぜか寝食を共にするだけで「人は変わる」、場合もある。食べ物の好き嫌いや、本音トーク、いつもは知らないチームメイトの横顔を見たり知ったりする。すると翌日ネットを挟んで打ち合うシャトルにも違った「声」が聞こえてくる。コミュニケーションを学ぶ場でもある「夏合宿」。家路に着くと、親は何となくわずかにたくましくなった我が子をその空気から感じるのではないだろうか。

 昨今は夏休みの終わりに力試しの「大会」が用意されている。どんな小さな大会でもこの日を目指す新人君は胸が高鳴る。厳しい夏を乗り越えた自分の姿が走馬燈のように駆け巡る。そして、満足な一日を終えて家に帰ると、山積みにされた宿題が妙な顔で出迎えてくれる。休み明けの先生の「おまえ夏休み何してたんだ?」というお叱りをうなだれて聞いている自分の姿が頭をよぎる。

 それでも「部活の夏休み」はいいものだ。

左から栗原選手、荒木選手、呉健秋選手

 

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