宵の明星

 昨日あたりから北風が強くなった気がする。夕刻、西の空がオレンジ色の黄昏から薄暮に変わる僅かな間だけシュッと丸みを帯びた鋭い三日月が現れる。するとその左上で、寒空にキーンと差し込む金星の明るい瞬きがこちらにアピールしていた。

 関東選抜、県私学大会を終えいよいよ明日は年内公式練習最後だ。

 夏のど真ん中にチームは世代交代した。先達が新記録を樹立したばかりだからなおさらその未熟さや不安は大きかった。言ってみても伝わらない、書いてみた。それでも忘れる。みんなで力を合わせて覚えた。動き方から打ち方、そして戦い方。1人より2人、そして全員で「記憶活動」を繰り返した。少しずつ形になろうとするがその一方で格差も広がりつつあった。みな顔が違うように成長のカーブだってその色合いだってみな違う。それはわかっていても揃わないとただそれだけで不安が増すものだ。いずれにしても揃って初期設定してほしい項目は「(やり方を)よく知って、やる気になって(できるまで)やり通す(Y,Y&Y設定)」だった。

 1年生は必死で着いてきた。2年生のみんなもそれぞれ気を遣いながら食らいついてくる。ジュニア予選、地区新人大会、県新人大会、関東選抜と何回かの実地テストを繰り返し、申し送り付きのハンコを押しながら年末までコマを進めてきた。その間にトップ選手は国体だの全日本ジュニアやジュニアグランプリなどの高いハードルの難関試験を経験し、土産話とともにチームに新しい課題と元気づける風を吹き込んでくれた。

 よくやっていたと思う。よく力を合わせていたとも思う。何より自分に課せられた役割をしっかりと担っていた。失敗や間違いは数え知れなかったが、学んだ知恵や感じた思いはそれを遥かに上回る収穫だったのでないだろうか。

 ■さて、今年はどんな年だっただろうか?

 平成が終わり、令和が始まり、それを祝うようにスポーツ界の活気と記録達成のオンパレードが1年を通じて繰り返された。その一方で災害で辛い思いをした(今もしている)人や地域の多さに振り回されたのもこの1年だった。

 ひとりひとりのトップ10は様々だろうが、一緒に経験できたいくつかの良き、そして時には辛い(ばかりかな?)思い出を共有できたのも今年だった。

 □そして来年はどんな年になるのだろうか?

 来年も雨や風の心配をするのではないだろうかと先程のニュースで囁かれていた。しかしやはり一方で2020の東京五輪がそれらを埋め合わせる感動を与えてくれるのだろうと願っている。

 ひとりひとりの予想はどだろうか?これも様々だろうが、ひとつでもいいから「同じ時を生きている仲間」としてささやかだけど生涯忘れられない感動を共有してほしい。

 夕空の三日月や金星の輝きはそんなみんなにエールを送っていたのだろう。

県私学大会