四国三郎

 入道雲の上には高い青空、そしてそのキャンパスに白い絵の具で自由に描かれた真白な雲が私たちをのぞいていた。

 四国徳島インターハイに行ってきた。

 関東平野は、箱根、秩父それぞれの【坂(山)】の東側なので『板東』と言われることがある。そして我々の街の東側を流域面積日本一の利根川が流れているが、これも『板東太郎』と言われることがある。その兄弟分の、徳島、吉野川を『四国三郎』というらしい。(ちなみに北九州は筑後川の『筑紫次郎』と合わせて「日本三大暴れ川」と言われているそうだ)

 その吉野川の下流と中流を早回しの動画のように毎日通い続けた。

 やはり今回も「長い試合」ばかりだった。90分を越える試合が多く、夜9時近くに宿に帰ることもあった。1試合、1試合が選手達の思いが詰まった作品なので時間がかかるのは致し方ない。もちろん相手チームや選手も同じ思いなので一歩たりとも譲らない。綱引きやにらめっこのような試合ばかりだった。

 ダブルスがよかった。準々決勝戦は特によかった。最後の1点が取れない。残念な敗れ方ではあったが、今までにないほどのベストゲームだった。個人戦もよかった。ダブルスは「最も小さい団体戦」だと思っている。その中には「組織」もあるし「役割」もある。リーダーが小声でパートナーに指示を出しながら、励まし合い、頭をひねり合い、次から次へと来る問題や課題を解決していく。諫早商業高校戦はおもしろかった。両ペアともチームワーク抜群であった。4人ともいい顔していた。

 大会会場と宿泊先を往復する車内はいつもの様に「行きはキンチョウ、帰りはリラックス」だ。

 運転する私に気を遣かいながらも様々な話をしてくる。3年生のひとりが話し始めた。この選手の話は長い、というか着地点がなかなか見当たらない。

 入学直後、まだ素性をよく知らないチームメイトと登下校も一緒になる。その中で、ひとりの小柄なその選手(ニックネームは『ピーちゃん』である)と方向も同じなので親しくなった。その子は特に約束もしないのにいつしか乗り換えの駅で彼女(話者)を待っているようになったそうだ。「そうだ」とは、それまでの話が長くふわふわまとまらないので、何となくまとめるとそうなのだ。この話はいつまで続くのか・・・と思いながらハンドルを握っていた。その相棒「ピーちゃん」は受験のため早めに部の練習から離れた。朝練には参加しないので当然登校時間も変わってくる。「そうだな、あたりまえだな」と思って私を含めた乗組員全員が半分あきれそうになったとき、大切な一言を彼女が言った。「わたし、いないはずなのに、ホームでピーちゃんを探していたんです・・・。」

 

 他愛もない話のようだが、私にはドンときた。あれだけコートを必死に走り続けていた選手のこれが「表話」だな、そう思った。

 仲間作りもスポーツの大きな柱だと思う。強い、弱い、1位、2位・・・は仲間作りには無縁のようだ。さらにこの仲間は永遠に消えない思い出の箱に守られている。

 こうして格好つけて思いを巡らせながら運転する車窓に、四国の山並みと蒼い空、そして暴れん坊の四国三郎のニコニコ顔が映っていた。

 新チームの最初のイベントは信州合宿だ。タケちゃん、頼むよ!

 ※今年は8月15日~18日です。