月・木・金

 心もち日が長くなった気がする。

 先週の水曜日、体育館を出ると西の空がまだうっすらと明るかった。「ワーッ、きれい!」と選手が思わず声に出す。それほど澄み切ったブルーの空に輝く星が神秘的だった。下から三日月、金星、そして木星。並べ替えれば「月・木・金」だ。どこかに火星もあったようだが、見つからずに家路につく。

 2月も終わり、春3月に入る。今週末は卒業式である。35期生は男女ともチャレンジャーがそろった。普通ではイヤなのだろう。必ず「初めて」を目指す。もちろん今までの選手たちもそうであったが、彼ら彼女らは性根から、あるいは無意識的に「初めて」を目指す選手ばかりだった。だが新記録などというものはそうたやすく達成されるものではない。だから必ず「痛い思い」もしてきた。もしかしたらこれからもするだろう。それでも、めげない、へこまない、そして前しか見ないその人柄は誰からも注目され、好かれると思っている。

 もちろん最初からそうであったかどうかは定かではないが、何しろ「コロナ禍入学、コロナ禍卒業」でマスクを外した顔を見る時間のほうが短い、しかし、そのマスクの中に隠された闘志は多かれ少なかれ全員が持っていたような気がする(今になって思えば・・・)。

 最初はコロナ対策のように自分も持ち場も消毒や清掃に気を配っていた。思い出せば、「厳戒態勢的消毒の日々」が続いていたが、そのピリピリ感は人間関係、チームワークにも影響していたかもしれない。それであっても、衛生管理の面からも器具庫や洗い場、トイレなど、自分たちの【暮らしの場】は常にきれいに保っていた。

 体育館の器具庫を我が部が既成事実として使いこんでいる。だが、時折バドミントン用具などで雑然としてくる。すると誰とは言わず「掃除しよう!」となって、整理整頓され気持がちいい倉庫になる。よく「この倉庫が雑然としていると勝てないんだよね」などと皮肉めいた言説を放つ時があった。が最近それも言わないくらいに整っている。みると水道周りやゴミの回収コーナーなどもとてもきれいになって、それを支えているかのようなメッセージがあちらこちらに添えられている。「可燃、不燃」はもとより結構細かなサインが張られているのだ。その中には「倉庫の整頓についてのお願いイラスト」もあった。「ヨシッ、こう描いておけばわかるでしょ!」という自信に満ち溢れたタッチで描かれている。それもこれも「この場所は『私たち場所』だから、気持ちよく過ごしたい」という願いが込められているのだろう。ひょっとすると教室よりも長く居た場所、そして苦楽を共にして、青春を燃やした場所。そこを大切にしようとするその心がけが気に入った。

 数年後、さらに数十年後に母校を訪れた時に、その倉庫は、そのゴミ捨て場はどうなっているのだろうか。「どうしてる?」と声をかけてくれるような場所であってほしい。

 何でもまずは身の回りを清めてから始めると気分がいいものだ。自分のラケット、シューズ、そして使っているコートに・・・、たまには心を宿してみよう。1本のラケット、1つのシャトルにも心あり。

 岩手選抜目指して、無我、無心、すっきり、ピッカピカで行こうじゃないですか。

緑のやつってなんだよ?

卒業おめでとう!