シフトチェンジ

 

 米の収穫が終わった。後はそれぞれの袋に詰めてみんなの手元に届けるだけだ。

 新チームが始動してちょうど1ヶ月。ふらふらしながらもキャプテンはじめ全員が勢いよく足並みをそろえて前に踏み出している。さらに今までは後ろに控えて「おまめ」状態だった選手も最前線で戦う日々が続く。疲労もストレスもピークになりそうだが、そのピークはずっと続く、毎年そうだから。

 プレースタイルも自ずと変わってくる。我々は「シフトチェンジ」という和製英語で表現しているが、子供の頃のバドミントンからグローバルスタンダードのバドミントンへの移行がこの時期の最大の課題である。しばしば耳にしたり目にするのが、「子供の頃は強かった選手が、高校生になると勝てなくなる」シーンだ。様々な理由が考えられるが、その中でも最大にして致命的なタスクが前述のグローバルスタンダードのバドミントンへの移行であろう。

 たとえば子供の頃は、①身長が低い、②本人はスマッシュと思っているフォアハンドのオーバーヘッドストロークも床に平行のドライブに近い、③そこでフォアハンドの押すようなショットが勝敗の要因になる場合が多い(図の①)

 その後(図の②)、①身長が伸びる、②フォアハンドのオーバーヘッドストロークから出されるショットの角度がついてくる(下向きになってくる)、③それをフォアハンドで対応するのは難しいし、キャッチできる範囲も狭まる、④そこでバックハンドのリターンが求められる。

 そしてもう一つ。①バドミントンのシャトルコックの構造上、初速は驚くほど速いが、その減速率は大きく、まるで紙風船を打ち合うっている感覚になる。②しかしそんな減衰するシャトルコックであってもネット付近から打たれようものなら意識的にキャッチできる代物ではない。③だからそのRiskリスクを減らすためにコート後方へのリターンが求められる。

 これらを誠実に実行すると、従来の西武台型のオープンバドミントンになる。ひとは「上げすぎでしょ!」とか「守ってちゃ上に行かないよね(この場合の上とは空ではなく、世界や日本の上位という意味だと思うが・・・)」や「ラリーが長くて試合進行が遅れる、協力してほしい!」などと苦言をいただく時もある。

 しかし、それでもある程度の結果もあるし、我々だってそんなふらふら上げているだけがゴールだとも思ってはいない。最終的な技術課題の克服は3年生の秋冬頃になる。それまでは辛い。それこそ毎日「血の涙」を流しながらラケットを握り、自らの不甲斐なさにたたきのめされる。それでもすべての困難を笑顔で隠し、肩を寄せ合って、little by little、slow but steady、目線をまっすぐ前にして進むしかない。技術水準を上げるのはそう簡単なものではない。ましてや天性の「なにか」を持っている選手ではない、ふつーの女子高校生にとっては時間がかかる。さらにそのゴールへたどり着く保証もない。されど前へ進む。それは人生がそうだからだ。

 ものを覚える、できるようになるという「学び」のよろこびは、しんしんと降り積もるような雪の夜を堪え忍び、輝く朝を迎えるようなものでもある。この体験を若い日に味わってほしい。だから今日も返し続け、そして学び続けよう!

中秋の名月、だったかな?