経験と学び
急に雲が高くなったような気がする。
先週末に輝陽祭が行われ、同日程で関東総合選手権大会も開かれ、全日本総合目指して健闘していた。慣れないうどんづくりに力を尽くした選手のみなさん、高校生現役最後の取り組みとなった選手のみなさん、共々お疲れ様でした。
週明けには待望の「稲刈り」が行われた。
米つくりは初めての体験であった生徒がほとんどで、一粒一粒のお米の大切さがわかったのかもしれない、わかってほしい。来年は倍の面積にしようとか、野菜もやろうという声がすでに上がっている。
米つくりの工程は、順番とタイミングを間違えてはいけない。ちょうどいい季節に種をまき、肥料を加え、水をはり、草をとり、稲を刈る。稲を刈った後でも口に入れるまではさらに細かなプロセスがある。これらを間違えると取れ高ばかりかややもすれば全てが台無しになってしまう。野菜つくりでも同じことだろう。品種ごとに大切な工程があり、それらを守りながら、風土にあったタイミングや量を調節しながら育て上げるのだ。
米つくりを通しながらバドミントンやスポーツ選手の育成を重ねてみた。自らの経験、特に失敗したエピソードを当てはめるとなぜか腑に落ちる。
始めた当初、「体力がない」と判断し、何しろ走らせた。農業で言えばとにかく水をあげ続けた感じだろうか。しかし、技術は育たなかった。選手はゲッソリするばかりで試合にならない。次はノックばっかりやった。さしずめ肥料ばかり与えたようなものだ。これもまた失敗。じゃあ自由に試合ばかりすればいいか、といえば畑や田んぼは草ボウボウになっている。もう厄介だから種から育てずに、すぐにでも花が咲くような苗を手に入れようか、などと考えた時もあった。さらに農業が「天気まかせ」であるように、自分ではどうにもならないことがあるのに、何でもできると思いあがっていた自分に警鐘を鳴らされたこともあった。
農作業に携わっている人ならたいてい同じような問題に直面することだろう。そこで良き助言を参考に改良や改善を繰り返し、満足のいく実りを迎えるように長い年月をかけて努力を続けるのだと思う。同じように我々も先輩諸氏からのアドバイスを聞きながら失敗を繰り返し、数えられないくらいの負けを経験しながら選手を育て上げてきた。話にするのも恥ずかしいくらいのほんの小さな体験だったが、今回は改めて自らの「経験」は大切だと思った。
刈り上げたばかりの田んぼから、藁(わら)を両手いっぱいに抱えて少し離れた場所に運んだ時、不思議とその藁一本一本から「熱」のようなものを感じた。「生きている」とわかった。これもやってみなければわからない「経験」で、ちょっとした「学び」だった。
『ハイブリッドスターライスプロジェクト2017』と題したこの企画は、この後乾いた藁でしめ縄を作り終了する。それを飾って新しい年を迎えたい。
ご協力をいただいたNPOの皆さま、保護者のみなさん、そしてなによりもご指導をいただいた星野様、心より御礼申し上げます。