姉妹

進路指導室の窓から空を観るといつになく碧い。梅雨明けだ。早い夏の到来にしばし戸惑った。

高校生のインターハイ予選や国体選考会が終わり、来週は定期考査が待っている。前回の轍(何て読むんだ?)を踏まぬよう心して取りかかってほしい。

春先から団体戦のたびに「あれっ」と思っていたことがあった。

2複1単でも2複3単でもストレートで決まるとシングルスで終わる。この春から加わった1年生の「お豆」がその大役を担っているわけだが、本来3年生が演ずる役の重さにどうしても慌てたりビビったりしてしまう。こちらはそれを経験してほしいからこそコートに立たせているつもりだが、ゲームの終わりがどうしてもパッとしない。がそれでも終了だからとネット際に皆が近寄る。

その時だ。主審脇で勝者サインを書いているお豆の足下からサッとラケットや足拭きや飲み物などを取り片付ける女がいる。このような光景はいままでもみていた。それは活躍した先輩レギュラー選手のためにという好意とせっかくベンチにいるんだから何かしなきゃという責任感で誰かが必ずやっていたようだ。だけどこの選手は「1年生」だ・・・、それより下っ端やファンはいないはず・・・。誰だ?と思って目をやると「姉」だった。

「いつもすいませんね。うちの妹、まだ新米なもので、スンマセンね、失礼します!」という感じにいつもの倍の速さでサッとそしてさりげなくやっている。その後も必ず毎回やっていた。

姉妹のスナップ写真を観た想いだった。当方は末っ子(全く子ではなくなったが・・・)なので下の立場は経験としてわかる。だが、姉や兄の気持ちはわかりづらい。

姉は大変だ。いつもいつでも初めての「切り込み隊長」で、しかも後を追ってくるかわいい「手下」の面倒もみなければならない。わがまま言いたいときもそのままズバリ言えない。いっそはじけて逃げ延びてみようって考えてもそんな曲がったことはできない。なにしろ後からついてくるんだから。

いつしか長女は黙り込み、涙さえ隠す技を身につける。たまった力は心の底についてくる。だから絶対に負けない。何が何でも切り開き前に進む。だって後ろについてくるんだから・・・。

一方、妹や弟は「要領がいいから」と切って捨てられるが、その立場の代表としてひと言言わせていただくならば、「ついて行くのも一苦労」だということだ。比べられるのがつらいだけのことではない。なにしろ前が見えないし、進むスピードがわからないのだ。だから休むタイミングを間違え怒られて、気を利かせたつもりがこれまた間が悪くドンビキ、ふてくされてプイッとすれば「やっぱり甘えん坊ね!」のレッテルを顔のど真ん中に貼り付けられる。どうしてこうなるの?

これだからいいのだろう。子供のうちはわからない。一番大切なものはまだ見えない。一人の人間として自立して、自分のペースやスペックがわかったとき、そんないつの日か姉は心の底からうれし涙をみんなの前で流し、妹は「お姉ちゃんのおかげです」と心の底から言える日が来る。

兄弟、姉妹率が高い我がチームである。苗字が同じヤツが多くて呼ぶの大変だし、親もいつも2人分3人分の苦労を背負って大変だろう。だけど49:51くらいで良いことが多いと思う。

先ほどもインハイ、国体で活躍し、ふたりとも難関大学に現役合格した兄弟の「弟」の方から電話が入った。要件は就職の件。どうやら【踊る大・・・】の「ムロイさん」になりそうだとのこと。泣き虫で汗っかきの弟がオールバック似合うかな?

ひとりっ子はじゃどうなの?的なご質問もあると思いますが、とりあえずチームのみんなが兄弟姉妹のつもりで接してください。見えないものが見えてきますよ。

暑くなりそうっすね。そろそろ案山子っすか?