4U

スマホで雨雲の様子をのぞきながら気象予報士のように次の一手を占う毎日だ。便利になったが不安は余計にふえた気がする。

車のラジオからこんなセリフが聞こえてきた。

『ひとに握ってもらったおにぎりが一番美味しいんだ。』

母を亡くした娘が毎日のお弁当を作るために朝早く起きてくると、台所で武道家である父親が大きなおにぎりを握っていた。その日は体育祭だった。年に二回だけ、大切な日に、大柄な父親が大きな手でおにぎりを握りながら言った父のセリフだ。

「おにぎり」と言えば、青森の岩木山のふもと、「森のイスキア」の佐藤初女さんは心を込めたおにぎりを、心に深い悩みを抱えた人たちに握り続けてきた。食べるものは心まで入ってくる、そう言っておにぎりを握っていた。

選手たちとお昼をともにするとわかることがある。正確に言えば「お弁当を観ればわかる」ことがある。こう暑い日が続くと『麺類』が増える。食欲がないのかな?お母さんは工夫を凝らして食べやすく、満足がいくように麺類を上手に盛り付けている。

他方、コンビニのおにぎり。さっきの話とは逆行するようだけど。きっとお母さんは忙しかったんだろうな、疲れているんだろうな、いや、子供に「何が食べたいの?」と聞くと「わからない」「じゃあコンビニで好きなの買って食べなさいよ・・・」というやりとりがあったのだろうか。互いに折り合いをつけるかたちのコンビニのお昼。かと言えばドデカいどんぶり状のお弁当箱(?)にたっぷりのご飯。「夏は食べなきゃだめだ!」的な肝っ玉母さんなのか「頼むから目一杯食べさせて!」というハングリー女子高生なのかわからないが、こちらは互いに戦い合ってる感が伝わってくる。

小さなお弁当箱にきれいに盛り付けられたおかずとご飯。そのお弁当に込められた気持ちまで頂くのだぞ。あれあれ、それより次のスイーツにピークを合わせているように目を輝かせてゆっくり味わって食べている。まあそれでもいい。食べられるだけいいと思う。そしてそのお弁当から受け取るメッセージを少しでもわかり合えればもっといいと思う。『サラメシ』が受けるわけがわかる。

「人の顔がいろいろあるようにその生き方も様々です」というコピーは本校進路指導部の隠れた決めぜりふである。様々なお弁当、それぞれのメッセージ、想い、満腹感・・・。いろいろあっていいな、と思う。「アスリートの食事はこうあらねばならぬ!」というお話はありがたく頂戴するとして、アスリートの前に親に育まれた高校生だし、多くの人たちに見守られているひとりの人間なんだ、ということが大切だと思う。

私事で恐縮だが、今とは違って高校生の頃は大会に親などはほとんど来ていなかった。だが関心がなかったわけではなかったようだ。だって、いつもは野球のボールくらいのおにぎりがその日はソフトボールくらいの大きさになっていたからだ。それだけでわかった。あの親も気にしているんだな、と。

さて、もう少しでインターハイだ。この時期はチームの舵取りが難しい。だけど選手から学ぶことも多いのもこの時期だ。結果より今日一日の思い、そして最も大切なのは『仲間』。必ず伝わる日が来る。

4Uと書いて「For you」って読むんだよ!

暑い暑いって言ってるから暑いんだよ!

利根川堤