水曜日の練習

 サザンカ梅雨と言うらしい。数日間どんよりとした空と、時折冷たい雨風にさらされた。身も心も引き締まる。

 全日本総合のスケジュールに合わせて、Xmas前後に行われている「関東高校選抜大会(全国選抜の予選です)」が早まった。定期考査もあるし、思うように時間がとれないが、2年生が先頭となってはりきっている。

 水曜日は創部当初から「体育館が使えない日」である。通常は大半の選手が休養に使うだろうが、中には家に帰って個人的に練習をやるものもいるし、治療院や髪を切りに行ったり、親子で買い物に行く選手もいる。さらには予備校に行ってセッセと勉強に励む選手もいる、だがいずれにしても水曜日は大切な「自己決定できる時間」が続いている。

 20数年前、私は家内と娘と3人で水曜日にバドミントンを楽しむようになった。きっかけはまだ低学年の娘がバドミントンで「遊びたい」と言ったか、家内がジュニアチームのコーチを頼まれたか、あたりだったと思う。だから水曜日は仕事をセッセと早めに切り上げ、イソイソと清水公園の体育館に足を運んだ。楽しかった。何が?といわれても、これがとは応えられないが、鮮明に覚えているのは、終えて、「さあ、ごはんにしようか!」と3人で体育館を後にするときの夕日、そして我が家に車を止めるやいなや飛び降り、肩に侍のようにラケットを背負った小さい子が玄関までダッシュする後ろ姿・・・だ。今思い起こしても愛おしい。

 その後、2005年に我が街にインターハイが来る!と言われるようになって、それに照準を合わせて小中学生の選手に、それこそ「上から目線的指導」を続けた。地元の体育館が会場ではあるが、最終日のコートに、背中に「千葉」の文字のない選手がいなければどんなにさびしいだろうか、という思いが私を追い込んだからだ。願いは叶ったが、間もなく2010年には国体が来る。休む間もなく「国体練習会」なるものを続けて行った。背負うものが増え、幾分厄介だったが、今思い起こせば良い思い出だ。

 現在、水曜日はNPO法人アルファバドミントンネットワークの「アルファクラブ」という、地域の青少年にバドミントンを「提供する」日になっている。我々も「地域の青少年(もちろん私は違うが・・・)」であるので、コートを1面拝借して練習を行う。他のコートでは小学生の子どもたちが思い思いのバドミントンを大人たちとワイワイ楽しんでいる。このアルファクラブのコンセプトは、バドミントン版『子ども食堂』である。つまりバドミントンを思う存分楽しんでもらうことがメインで、大会を目指すジュニアクラブとは大きく異なる。その分、関わり合いが難しい。これはやった事のある人ならばわかるだろうが、上から目線で「教えてやるよ!」的なことはできない。何しろ遊びたくてしょうがない小学生がおしゃべりしながら、ニタニタ、時にゲラゲラ笑って大人や高校生と時を過ごしている。対照的に隣の1面では、遠い夢をまっすぐ追っている高校生が大真面目に羽を打ち合っている。不思議な時間である。

 夕刻6時になると、子どもたちは火照った身体のまま、母さんたちと体育館を出てゆく。日が沈み薄暗くなっているが、明るい灯がともるそれぞれの我が家へ笑顔で帰っていく。そんな姿を見れば「よかったんだな」と感じることもある。水曜日の練習として「完成形」ではないまでも理想に近い気がしている。

 そして先週、今年最後の満月の日に、私に思い出の一場面を残してくれた娘が母親になった。

 従って自動的に私は名実共に「ジジイ」になってしまったようだ。

 関東選抜まであと1週間!ドーンといこうよ!!ドーンといきたいよね。

ラストフルムーン with 火星